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グライダー人間と飛行機人間

 大学教授が書いた文庫本を読んでいましたら、「グライダー人間」と「飛行機人間」という面白い表現が出ていました。大学ですから卒業論文などの論文の執筆が学生や大学院生には求められます。

 論文の執筆に当ってはテーマ・主題が必ず必要です。卒業論文を例にとると、論文作成に着手しなければならない時期に「先生、どのようなテーマで執筆すれば良いでしょうか」と学生が尋ねてくるとのこと。自身の論文ですから、自分でテーマを見つけなくてはならないのにです。教授はテーマ探しの種を学生に幾つか話すのだそうです。学生からは時にはノーという返事もあるとか。「難しいです」「できません」が常套句の断りトーク。「だったら訊いてくるな」とは教授の弁。グライダー人間には成績優秀者が多いとも書かれていました。

 一方の飛行機人間。自分で論文テーマを探し出し、論文も提出期日までにしっかりと仕上げてくるそうです。グライダー人間と飛行機人間の差はどこにあるのでしょうか。

 優秀ですが人に頼ることが得意の自分では何もできない人がグライダー人間。超優秀とは言えないまでも、自分で課題を見つけ出し解決策も立案し実行する飛行機人間。グライダーは高く空を飛ぶことができますが、グライダー自身はその高い空へ自発で浮上することはできません。希望する高度へ浮上するまでには飛行機などの助力機関が必要なのです。

 このような記述をみてふと思いました。「寄らば大樹の陰」「長い物には巻かれろ」「出る杭は打たれる」など、日本古来からの格言には安心安全を第一とする思想が潜在的にあったのです。令和の時代に突入した日本経済、再浮上できるかは安全志向のクライダー人間ではなく、飛行機人間が巷間溢れる状況を創り出さなければならないと思うのです。