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最低賃金はどこまで上昇するか?

 日本経済新聞6月20日付け朝刊に最低賃金に関する興味深い記事が掲載されていました。日本の他、米国、フランス、ドイツ、英国、韓国の最低賃金情報がグラフで表わされていました。縦軸は平均賃金に対する最低賃金の割合を示しています。例えば、時間当りの平均賃金が2000円と仮定すると、最低賃金が1000円の場合は50%となります。

 横軸は2010年(平成22年)から2018年(平成30年)までの時間軸となっています。最低賃金の平均賃金に対する割合が9年連続の折れ線グラフとなって表示されていました。日本は安倍政権になってから毎年20円以上の最低賃金UPがなされてきましたので、グラフは右上がりの傾向を示しています。それでも40%前半です。

 記事はこう書いています。”最低賃金/平均賃金>60%”となると雇用環境は悪化し経済活動も停滞すると。隣国韓国は文政権になってから急激に最低賃金を引き上げてきました。その結果、50%台から65%に急上昇しました。しかし失業率は改善されていません。その一方で中小零細企業は「高い賃金を支払う位なら自分がこれまで以上に働く」と経営者自身を追い詰めるか、「体力のあるうちに自主的に廃業しよう」と意思決定したらしいのです。その結果、財閥主体の韓国経済は成長率が鈍化しています。雇用が増えなかった例としてフランスがあります。フランスは60%超で慢性的な高い失業率に悩まされています。

 安倍政権は余程の失態がない限り2021年9月まで続く可能性が高いです。ここで”最低賃金/平均賃金=50%”となる最低賃金を予想してみましょう。平均賃金は健康保険の任意継続保険加入の際に活用される平均賃金が参考となります。この平均賃金は現在300,000円です。とすると、時間当りの平均賃金は(300,000円×50%)÷173時間=867円となります。173時間は週40時間労働を前提として計算した月平均の法定労働時間です。

 大分県の最低賃金(H30/10~R1/9)は762円です。2021年10月までに3回の改訂時期があります。毎年25円引上げるとすると75円UPの837円が、2021年(令和3年)10月以降の最低賃金となりそうです。前出の50%ラインが867円です。この867円からすると837円は極めて現実的です。経営者は最低賃金850円の到来を見据えた企業経営をしていなくてはなりません。大変な時代になりました。経営者の心中、察するところがあります。