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新一万円札の顔に渋沢栄一

 政府は4月9日に2024年(令和5年)に日銀券(の人物を変更した)新札の発行を発表しました。大分県人としては一万円札の顔が気になるところです。現在の顔は郷土の偉人藤澤諭吉です。前回の改札のときにも生き延びた(!)のですが今回は新しい人物と交替です。

 その人物とは日本資本主義の父、渋沢栄一です。渋沢は幕末に生誕し、当初は尊王攘夷思想に傾倒し統幕運動をしたようです。しかし縁あって第15代将軍となる徳川慶喜の家臣となります。幕府はフランス政府の支援を得ていたこともあり、フランスで開催されていた万国博覧会に視察団の一員として参加します。その際に資本主義の何たるかを理解したようです。

 明治政府になって一時は官僚となったようですが、直ぐに下野し、現在の日本経済の根幹となっている企業を600社ほどを起業させています。また慈善事業にも注力し、600社の中には公益事業を行う学校や福祉団体も含まれています。

 現在の三菱の創始者である岩崎弥太郎がある話を渋沢に持ち掛けたそうです。「私と貴方が組めばもっと儲かるビジネスを展開できる」と。しかし渋沢は断りました。ビジネスを私欲の為のモノとは考えなかったのです。欧米列強の植民地化政策に対抗すべく、弱小日本の社会や経済基盤を早急に強化し、欧米諸国からの圧力を軽減しかつ対抗できるように尽力したのです。国士の人物と言えるでしょう。

 この話から分かる様に渋沢は経営者には道徳も必要という立場を取っていました。著作「論語と算盤」にその考えが記述されています。約600社もの企業や公益・慈善団体の設立に尽力したにも関わらず、渋沢財閥を形成しなかったのも驚きです。明治新政府の払い下げを受けて、住友、三菱、安田等々の財閥が形成されていったのと比較すると渋沢の清廉性が際立っています。

 福澤は精神的な面でまた官立に対抗して民営・民力で殖産興業の大人物を多数輩出させました。渋沢は「正しい商売とは」という考えに立ち、現在でいう「企業の社会的責任(CSR)」を企業人に植え付けようとしました。

 新旧交代の1万円札の顔から、私達は学ぶことはとても多いと感じます。経営者の皆さん、今一度両名の著作を手に取って10連休で持て余す(?)時間を有意義に活用してみませんか?