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副業を認めるか否か

 昨日、ある問合せがありました。「副業を認めるか否か。認めるとした時の副業許可申請書の様式をどうすればよいか」というものでした。賃金の伸び率が低率で推移していることから、また時間外労働の抑制を労働基準法等の改正による法令面からも希求されていることから、社員の副業を認める方向で社会は進んでいるように思います。あの厚生労働省も就業規則のひな型で、副業を「原則禁止」から「原則良し」とする条文を入れているようです。

 しかしその企業からの質問を精査すると副業を認めるには会社のリスクがとても大きいものだと分かり、「この場合はNoとすべきでしょう」と助言しました。さて、その従業員が期する副業とは如何なものでしょうか。

 ①副業の開始は深夜12時からで早朝6時に終了する

 ②会社の勤務時間(8時30分から17時30分)はきちんと就労する

 ③時間外労働には対応する

 この3つの条件を頭にいれた皆さんはどのように思いますか? 私は会社に労働災害等の発生リスクが高いと指摘しました。「以下のようなリスクがあるのにそれでも副業を認めますか」。

 A.労働者の一日の労働時間は0時00分に始まり、24時00分に終了します。よって、(副業を認めた)会社での勤務で10時30分以降の労働は時間外労働となり、副業を認めた会社は時間外割増賃金を支払わないといけません。そんなおかしなことがあるか?!、と思うかも知れません。労働時間はその従業員が「一日に働く時間のことである」と前提です。「その従業員の一日の始業は深夜0時00分からで一日8時間の法定労働時間の計算はされる」という法令上の規制ルールを知らなければなりません。

 B.心身共に疲れ切った状態で(副業を認めた)会社で仕事をするとなれば、つまづいて転び足を骨折するなどの労働災害の発生確率が高まっていく可能性が高いです。その会社の勤務は8時間だとしても、「一日通算だと14時間も働いていた」ということになり、安全配慮義務違反に問われる可能性もあります。

 C.心身共の疲れが労働災害の発生確率を高めていることは厚生労働省等の研究会で報告されているところですが、これを睡眠で対応しようとすると、一日の睡眠時間は6時間の確保が必要であるという認識が一般的です。一日24時間、勤務時間14時間だと私生活の総時間は10時間。「残業もする」「移動時間が必要となる」「食事や入浴等の時間も必要である」等々の事情を考慮すると、毎日の睡眠時間を6時間以上確保するというのはとても困難だと思います。

 以上、A、B、Cの3つの環境を踏まえての「副業は認めない」が望ましいと説明をしました。経営者の皆さん、安易に副業を認めない様にして下さい。そのような事例が発生しそう場合は、清成事務所でご相談下さい。会社の立場をしっかりと認識した上で助言をいたします。