中央最低賃金審議会の小委員会で今年(2018年)の最低賃金の引き上げ額を26円と決定しました。大分県を含む各都道府県の審議会では、この答申を受けて各県の最低賃金を決めていくのですが、20円半ばとなることは確実です。大分県の最低賃金は現在737円ですので、23円の引き上げで760円となります。安倍政権が目論む(?)2020年の最低賃金額、全国平均で800円以上の達成はほぼ確実な情勢となってきました。
最低賃金の大幅な引上げは家計を潤すはずなのですが、そうとも言えません。今日(18年7月28日)の日経新聞一面だったと思いますが、景気上昇局面となっている現在でも企業の「設備投資伸び率」や「現預金増加率」と比較して、「賃金伸び率」は低位に推移していることが報告されていました。賃金上昇の圧力に対して、企業はIOT等を駆使した生産性向上で対応しようとし、その結果人件費に回す資金の伸び率が抑えられてきたのです。最低賃金引上げという管制圧力に抗して、企業は人以外の部分での生産性向上で応えようとしているのです。
人件費は固定費です。通常国会で成立した一連の働き方改革法令で、企業の人材マネジメントの優劣が問われてきています。拙劣な人事が続いていくと、「現金を稼ぐ力は落ちていく」こと間違いなしです。そこで企業は同額のコストであれば、固定費から変動費へつシフトしていきます。例えば、人的コストであれば、正社員から派遣社員に転換するという具合です。非正規労働者の割合は40%弱であると非難されますが、企業は生き残る為には必須の取組であったことも否めません。なお、非正規労働者が増加することで、技術力やノウハウ、スキルの伝承等に問題が発生していくことも疑いのない事実です。
何はともあれ、最低賃金の上昇圧力は当分は続いていきます。経営者はこの圧力を弱めていくためにも、自力で生産性向上の努力に日夜集中していかなくてはなりません。経営者の心休まる時間はいつ訪れるのでしょうか?