10月2日付の日本経済新聞、驚くことに上場企業の株式変動の記録が真っ白だったのです。数字が全く記載されていませんでした。これにはびっくりしました。毎日、開始値-最安値-最高値-終値と一日の株式の変動状況が、全上場株式の一覧表となって3頁位に亘って記載されています。それが全て空白なんです。
理由はもう分かりますよね。10月1日の取引開始にあたり、東証のシステムがダウンしたのが原因です。取引開始からシステムダウンし終日回復できなかったのであれば、1日の取引は全く成立できないのは当然です。問題なのは、何故システムがダウンしたかということです。この原因調査をしっかりとしなければ、同じことを繰り返すことになると思います。
詳細は分かりませんが、新聞報道等によるとメモリーの不具合により故障が発生したとのこと。そうであれば、バックアップシステムが即座に稼働しはじめ、取引自体は問題なく動くはずだと思うのです。結局は二重、三重のバックアップ体制が取られていなかったということを証明してしまいました。「バックアップ体制をとっていた」という主張もなされるのでしょうが、不具合が発生したときに臨機応変に対応でき、株式取引等の日常に問題を発生させないようにするのが、バックアップ体制というのではないでしょうか。株式の素人でも分かる内容です。
とすれば、東証が主張するであろう「バックアップ体制を整えていたが、正常に稼働しなかった。想定外の事情が発生した」などの弁解は、株式市場に参加する全ての利害関係者を愚弄する言葉としてしか聞こえないでしょう。「最悪の事を考えて対策を練り上げていく。その対策に問題がないか、訓練等を通じて検証をし続けていく」。このような姿勢を東証が持っていたとすれば、終日システムダウンが継続するという異常事態は発生しなかったでしょう。
話は変わりますが、9月30日には仙台高裁で2011年3月11日に発生した東日本大震災によって被災した福島第一原発関連の訴訟で国が敗訴しました。10メートルを遙かに超す津波到来が予想されるという研究の成果を踏まえ、国は東京電力に防波堤の造り変えなど適切な指示出しをしなかった責任を咎めたのです。あの未曾有の大災害を引き起こした当時の東電経営者達は「このような高い津波到来は想定外であった」と弁解に終始しました。その時の構図が、今回の東証システムダウンで再び繰り返されようとしています。
今回のシステムダウンで東証は日本国内は当然のこととして、海外の投資家からの信頼も失ってしまいました。長年積上げてきた信頼・信用は一度のトラブルで失墜するのです。今回の事案を他山の石として、自社の経営体制の見直しを行って欲しいものです。